「チョコレート革命」が起こった国。スイスとチョコレートの歴史
世界のチョコレート消費量のトップ5に入るスイス。年間消費量は一人あたり10キロを超えるとも言われます。スイス国民にとって、チョコレートはとても身近な存在で、わざわざ有名店に買いに行かなくても、種類豊富で高品質なチョコレートをスーパーで買うことができます。
また、カカオが育たない国にもかかわらず、スイスは世界でも有数のチョコレート生産国としても有名です。何故スイスではこんなにチョコレートが有名なのでしょうか。
偶然や人の縁が生み出した「ミルクチョコレート」
今やどこでも手に入る「ミルクチョコレート」ですが、実はスイスが発祥であることをご存知でしょうか。
美味しいチョコレートを世界に普及させることができた背景にはスイスの技術力があったのです。
1819年、スイスではフランソワ・ルイ・カイエ( François-Louis Cailler、1796〜1852)が作った世界初のチョコレート工場が操業を開始しました。
やがてカイエの娘と結婚した夫のダニエル・ペーターは、の実家でチョコレート作りを学び始めましたが、苦戦。そんな折、彼の親しくしている隣人でドイツ人移民のアンリ・ネスレが粉ミルク製品を開発。
チョコレートの原材料であるカカオは、水分との親和性が悪いため組み合わせるのが難しいとされていましたが、アンリがつくった「練乳」を使用することで、「ミルクチョコレート」の製造に成功したのです。
それはヨーロッパ中でたちまちヒットしました。これが、スイスが起こしたチョコレート革命の1つです。
ザラザラのチョコレートを滑らかに変えた!メランジェールの発明
他にもスイスが起こしたチョコレート革命はたくさんあります。
世界初のチョコレート工場が操業した1819年以降、今度は、チョコレートに夢中だったスシャールというショコラティエが砂糖とカカオパウダーをすりつぶして滑らかなペーストにする「メランジェール(mélangeur)」と呼ばれるミキサーを発明しました。この発明によって当時ざらざらした口当たりだったチョコレートを滑らかなペースト状にすることに成功した。
その影響で、1883年にはスシャールのチョコレートはスイスのチョコレート生産高の半分を占めるようになったほどでした。
さらに同時期、ミルクチョコレートが開発された後に「コンチング」というチョコレートの滑らかな口どけを実現させる工程を、ロドルフ・リンツが生み出しました。
コンチングとは、一言で説明すると「じっくり練ること」。
コンチングの時間は12時間〜24時間と、各メーカーによって様々です。
コンチングすることによって、
- 1. 摩擦熱で温めて液化を促す
- 1. 不要な水分や酸味成分、香気成分を飛ばす
という効果があります。
コンチングが生まれたのは、リンツがたまたまチョコレート製造器のスイッチを切り忘れて長時間放置してしまったことから。ハプニングの産物によって、より滑らかで美味しいチョコレートが生まれたのです。
度重なる偶然によって起こった「チョコレート革命」。
スイスのチョコレートに対する探究心が根底にあったからこそ、次々と幸運が重なったのかもしれませんね。